長川研究室の博士前期課程1年生、川瀬智大さんの論文がEuropean Journal of Inorganic Chemistryに公開されました。
これまで適用先が限られていた「大気中での溶融塩処理法」を、新たにドープ型硫化亜鉛(ZnS)へと展開しました。その結果、熱処理時間を短時間に制限した場合、バルクZnSの転移温度(1020 °C)よりも低い600 °Cでzincblende構造からwurtzite構造への転移が起こることが明らかになりました。さらに興味深いことに、熱処理時間を延長すると、再びzincblende構造へ戻ることも確認されました。特に、得られたwurtzite構造のサンプルは、未処理試料や長時間処理した試料に比べて高い水素生成活性を示しました。今回作製したドープ型ZnSは、水素製造を目的とした光触媒としての応用に加え、光電極のベース材料としても期待されます。
論文情報 タイトル:Synthesis of Metastable Wurtzite Cu–In‐Doped ZnS Photocatalysts via Molten Salt Treatment
著者:Tomohiro Kawase, Yoshio Kobayashi, Haruki Nagakawa*
掲載誌:European Journal of Inorganic Chemistry, Volume 28, Issue 23, August 2025, Page e202500252.
リンク:https://doi.org/10.1002/ejic.202500252 (オープンアクセス)

大気中での溶融塩処理によるドープ型ZnSの結晶構造制御